実録! 暴駄フォンと斯く戦へり

ボーダフォン(当時)ケータイは修理に出すと、心当たりの無い「水濡れ」を理由として拒否される事がある。これは、ふとしたキッカケからそんな「ボーダフォンマジック」に巻き込まれた一ユーザの戦いの記録である。

たらいまわり

やっぱ地裁以上はプロ仕様ってことかー。
執行文を何処で取りゃええのかなんて百も承知のプロが出入りするんだから、んなもん必要ないって事なんだろうな。

だいたい地裁は入り口からしてプロ仕様なんである。
職員はともかく弁護士なら荷物検査を受けなくていいが、一般人の出入りはまるで空港のような荷物検査と金属探知機ゲートをくぐる事になっている。いちいち財布や携帯をポケットから出さにゃならんので面倒くさくてしょうがない。一般人は滅多な事で来んなって事じゃあないだろうが、いよいよこういう所に嬉々として出入りしてる一般人の気が知れんわ。

まあ無いもんは仕方ないんで、開廷表置いとる所に立っとる守衛さんらしい人に聞いてみた。

塚「すんませーん。ちょっとお聞きしたいんですけど、地裁には簡裁の受付相談センターみたいな所はありませんか?」
守「地裁にはちょっとそういう所はありませんねー。今日はどういったご用件で来られたのですか?」
塚「実はかくかくしかじかで、地裁でもらった和解調書の執行文を取りに来たのですよ。いろいろ調べてみたんですけど、どこに行ったらええのか分からなくってですねー。簡裁の事件やったらそのまま簡裁の受付相談センターに行きゃあええのですけど、地裁の用件で伺っても怒られやせんですか?」
守「そんな事は無いと思いますよ(笑)。でしたら地裁の用件と言わずに聞いてみてはいかがでしょうか?」

なるほど。そりゃもっともな話だ。
話の過程でバレるだろうけど、簡裁の用件でも強制執行に至るケースは無くは無いだろうからな。
てなわけで道一つ挟んではす向かいにある簡裁へ。こちらは金属探知機も荷物検査も無く普通に入れる。
そういや簡裁に来ること自体、初っ端の調停申立てと訴状提出以来、1年と半年ぶりくらいである。こっちは法曹関係者と一般市民の割合が地裁とは逆転していて、あっちよりは居心地がいい。
まあどっちにしてもしょっちゅう出入りしたい所じゃないが(笑)。

受付相談センターは久しぶりに来たんで使い勝手がよく分からん。えーっと、この紙に必要事項書きゃええのかなってまごつっきょったら、ちょうど昼休みから上がってきたと思しき職員が声を掛けてきた。
最近は銀行もこんな風にサービスがよくなってきたが、税金でメシ喰っとる裁判所職員にしては見上げたモンである。

相「あの。どうしましたか?」
塚「えーと、実はこないだ和解調書をもらったんですけど、相手方が約束守ってくれないんで強制執行の手続きを取りたいんですよ。そんで、それには執行証書と送達証明ってものが必要だって聞いたんやけど、どこに行ったらそれをもらえるのかなーって。」
相「いま和解調書をお持ちですか?えーっと、決定はだいぶ前に出ていますね。事件の記録はもう記録係に行ってるとは思いますが、まずはこの事件を担当した係に行かれると良いですよ」
塚「担当の係と言うと、ここに載ってる民事43部の事ですね?わかりました、そちらに行ってみます」

また地裁かよ!(笑)。もっぺんあの荷物検査を受けにゃならんのかー。

しかしこれで教科書にも載ってないことを一つ勉強した事になる。要するに執行の手続きに移るまでは、全て原審の手続きを行なった部署が管轄する事になるわけだ。
執行は執行、審議は審議。相互が干渉しあうことも無ければ、それ以外の何者かが現れることは無い。どこまでも縦割りと言ってしまえばそれまでだが、これはこれで合理性があるというわけかもしれない。

簡裁と地裁は地下でも繋がっているがここは職員以外通れない。仕方が無いんでまた荷物検査を受けてから地裁の民事43部へ行き、最寄のデスクにて執務中の女性書記官に用件を伝えた。

塚「・・・そういうわけで、和解したのに約束守ってくれないから強制執行の手続きをしたいんで、この和解調書に執行文の付与と、あと送達証明を頂きたいんですよ。ついては申請用紙みたいなものがあれば頂きたいのと、あと費用について教えていただければと」
書(女)「はぁ。間接強制申立ての為の執行文付与ですか? 少し確認しますので、そちらに掛けてしばらくお待ち下さい。」

んー?さては任官したてか移動したての書記官なんやろか?ぱっと見、若そうやし。

さて、この裁判所書記官について小話を一つ。
現在のロースクール制度前の話で恐縮ですが、司法試験を大学在学中に合格できるのは、よっぽど優秀な人達に限られる。だもんで、私含め多くの受験生は大学卒業後も試験勉強をしている司法浪人となるわけですが、仙人じゃないので霞を食って生きられるわけではない。よって、よっぽど裕福な家庭の子女である場合を除いては、何らかの生活の糧を得られる手段が必要になるわけですが、その進路の一つとして裁判所書記官は私の所属していた勉強会では流行っていた。
民間、ましてやフリーターなんかやってると、とても勉強する時間なんか取れないからね。必然的に、定時で上がれるし勉強範囲も割とかぶる公務員が、司法浪人生の仮の姿として人気が高い。特に書記官は、今回のケースでも分かったけど、訴訟法や手続法についても実務で詳しくなれる。ヘタに論文読み漁って作った答案なんかより、よっぽど説得力はあるだろうからな(笑)。
ただこれは人によりけりだとは思うが、あまりに安定した身分はハングリー精神を削いじゃうのも事実なんだよね。私の同期でも何人か書記官になった者がいるが、結局そのまま試験は辞めちゃったらしい。
とは言え3○歳にもなって親の仕送りで宅浪やってんのも見たことあるけど、あれはあれで悲惨。親が死んだらこいつどうなるんだろうと人ごとながら心配になってきた。職歴も社会人経験も無く、法律だけやたら詳しい法律オタクなんてどこも雇ってはくれんだろ。
さてロースクール時代の司法浪人はどうなるんだろうか?

閑話休題。
まあこの書記官がどういった経緯でなったのかは知らんが、とりあえず何か確認したいことがあるらしいんで、奥にいる別の書記官の所に聞きに行った。その別の書記官は、ちょうど前田吟をノッポにしたようなカンジで・・・って、ありゃ?

あの人は確か原審の書記官やないか??


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塚山亘

Author:塚山亘
都内の通信事業者に在職中の
ネットワークエンジニア。
(※携帯電話業界とは直接関係
ありません)
■座右の銘
立って半畳、寝て一畳、
天下取っても二合半
■過去の経歴
丙案時代の元司法試験受験生。


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